新しい判断

★ 政界では都知事・舛添要一が会見で連発した「公正な第三者の精査」が今年の政界流行語で決まりという声があふれていたが、1日の首相・安倍晋三の国会閉会の会見での発言にとって代わられそうだ。首相は17年4月に予定していた消費税率10%への引き上げを、19年10月まで2年半延期すると表明したが、その中で「今回、再延期するという私の判断はこれまでのお約束とは異なる『新しい判断』であります。公約違反ではないかとのご批判があることも、真摯(しんし)に受け止めています」と妙な理屈を展開し始めた。

★ 「新しい判断」。これは驚いた。公約も国民との約束も事情が変われば、国民と向き合い謝罪や事情を丁寧に説明すべきだ。アベノミクスは成功していて「中小企業の倒産も、政権交代前から3割減少しています。ここまで倒産が減ったのは25年ぶりのことであります」と首相は胸を張る。前政権と首相は対比したがるが、それもおかしな話だ。民主党がでたらめな政権を担っていたのは09年からのたった3年半あまり。その前は麻生、福田、第1次安倍、小泉と自民党政権が続いている。失敗や低迷期も自民党時代だ。

★ そして「新しい判断」だ。戦時中、大本営が敗走や撤退を転進と言い張ったことに似ている。「新しい判断」とはアベノミクスの失敗を隠すための詭弁(きべん)であり転進だ。民主党野田政権の時に、民主・自民・公明の3党合意で決めた消費税政策はこれで消え去ったといえる。既に民主党はなく、自民は消費税政策自体を「新しい判断」にすり替えた。となれば政権は「新しい判断」について国民に信を問うのではなく、この政権の整合性や、この政権が「新しい判断」を進める合理性を問うべきだ。つまり、新しい判断は安倍政権を必要としているか、または安倍政権に「新しい判断」の政権運営をやらせるべきかではないのか。

日刊スポーツ「政界地獄耳」から引用

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