11/03(文化の日)に入間航空祭が開催された。入間基地(埼玉県)は街中にあり戦闘機の飛行訓練に制約があるため、首都圏防空任務を百里基地(茨城県)に譲っている経緯がある。したがって我が地元の百里航空祭の方が内容が濃いと思うのだが、車をどこに止めてよいのか分からないので躊躇していた。何事も経験するべきと今回入間航空祭のバスツアーを申し込んだ。、基地の中までバスで入れるとか、観覧する席が特設されているとか、何か特典があればと思っていたのだが全く期待外れだった。西武池袋線・所沢駅前でバスから降ろされ、添乗員の先導で基地正門まで20分程歩かされた。ここで添乗員が「バスは2時に出発です。込み合いますので、早めに帰ってきてください。何かあったら携帯に連絡を入れてください」と説明した後、大切なお客様を大混雑の正門に置き去りにしてバスに帰ってしまった。これがヒステリックな一日の序章である。
兎に角人混みが動かないのである。漸く正門を抜け身体検査を受けると余裕ができたので、今日の案内パンフレットを求めて、模擬店が並ぶ広場を探し廻った。パンフレットにざっと目を通すと、Blue Impulseの飛行は12:45~14:00、F-15Jの飛行は14:35~14:45。「エ~、F-15Jはたった10分間しか飛ばないの! バスが出発した後じゃないか」 そうこうしている内に、また渋滞に巻き込まれた。上空は雲が垂れ込めている。ブルーとホワイトに塗装されたBlue Impulseの艶のある機体は、太陽光の下の濃紺の空でないと映えない。戦闘機はレーダーに捕捉されないように塗料は乱反射するので、太陽光線が当たっていても鈍い色に写る。今日のどんよりした空では、良い写真は撮れないと、早々に諦めてしまった。全く人混みが動かなくなったので、「この先に何があるんですか?」と隣の人に聞くと、「踏切ですよ」と返ってきた。パンフレットを出して地図を見ると、基地の中を西武池袋線が横切っている。踏切の横には稲荷山公園という駅があり、この駅に電車が留まるため「開かずの踏切」になっている。基地の中に民間施設が入り込んでいるのか、基地の敷地が二つに分かれているのか、どうしてこんな不可解なことになっているのだろう?
Blue Impulseの飛行はたっぷり時間がある、と思っていたがそうではなかった。パイロットの紹介やらウォークダウンで大分時間が取られた。漸くエンジン音が全開して編隊が離陸して行ったが、薄暗い雲の下では地味なパーフォーマンスだ。おまけに通常は6機編隊だが、今日はなぜか4機しか飛んでいない。更に追い打ちをかけたのが、エアー・ショーの途中で「所属不明の物体が飛行空域に侵入したため、Blue Impulseの飛行を中止します」という突然の場内アナウンスだ。「??? 飛行機が飛ぶときはフライト・スケジュールを提出するのだから、そんなことが起こるはずは無いだろう! しかも航空祭の真っ最中にだよ…」と、なんか変だと思った。後で分かったのは、このときドクターヘリが侵入して来たらしい。近くに埼玉医科大があるので、急患が運ばれたのだろう。ドクター・ヘリでは仕方がないが、緊急時の対応がお粗末過ぎる気がする。自衛隊は重大行事をサドンデスにして良いのか? 航空祭は遊びだから、大したことではないか。
「今1時半だ、バスに帰ろう。正門は通らない」とかみさんに伝えた。遠回りの北門に向かったが、こちらも人混みで身動きが取れなかった。今誰かが大声を上げれば、パニックに陥り多数が押し潰されるのは間違いないと思うと、恐怖が湧いてきた。そんな中かみさんは、どこかに逸れてしまった。携帯電話を掛けても繋がらない。基地の中は施設の電波が強くて、携帯電話が圏外になってしまうんだと思っていたが、どうもそうではないらしい。来場者が盛んに携帯電話を使うため、電話業者が回線ダウンを回避する規制に入っていることが分かった。繋がらないからまた電話をするという鼬ごっこで、回線は増々混乱が酷くなっていく。動き始めて既に1時間半が経ったが、まだ基地の内だ。バスは出発してしまったかもしれないが、添乗員と連絡が付かないのだからどうしようもない。大半の乗客はバスに乗れなかっただろうと想像された。通行を規制しているロープを潜って、近道を走って北門に辿り着いた。基地外の道を所沢駅方向に歩いていると、朝とは別の踏切が立ち塞がっていた。漸く踏切を超えて歩いていると、携帯電話が鳴った。かみさんからだ。「踏み切の手前で止まっているんだけど、今どこにいるの?」と聞いてきたので、「ラッキーだ。踏切を渡ったばかりなので、ここで待っている。そのまま真っ直ぐ歩いてきてくれ」と電話を切った。二人揃って所沢駅に着いたのが4時ごろ。バスはまだ待っていた。最後の乗客が帰ってきたのは4時半ごろで、大混雑の正門を通って来た人たちだ。実に2時間半も遅れて、バスは帰路に就くことになった。余りのできごとに、はしゃぐ人はいなかった。
例年は5~6万人の人出だそうだが、そんなときでも入間航空祭は「人間(にんげん)航空祭」と呼ばれていたそうだ。今年はその3倍は入場していると現地で言われていたが、後日航空機の「追っかけ」をやっている人が、32万人が押し寄せたと言っていた。例年の6倍である。何でも航空機関係のTVドラマがあって、その影響を受けて人が繰り出したらしい。「みんなが行くから、行かないと…」という日本人の体質がよく出ている現象だ。同じ真似をするなら、「倍返し」の半沢直樹や「私、失敗しないから…」の大門未知子になってもらいたいのだが… 人生を掛けるような大それた真似はできないか。今年の大混雑はバス会社の想定を超えていたのだろうが、稲荷山公園駅の両端にある西武池袋線の踏切を渡るというルート設定は、来年からは避けてもらいたい。アンケート用紙に、散々苦言を呈した。
そんな訳で航空祭の写真が無いので、九十九里海岸沖の訓練海域から帰還した百里基地のファントム戦闘機を掲載する。